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同族会社の使用人である社長の奥さんのボーナスが、なぜ損金にならないことがあるの?その対策は?【法人税】

2022/6/29

はじめに

浜松市の木野寿久税理士事務所です。

豊橋市の方も受託可能です!

 

 

さて、

税務調査などで指摘を受けやすい

「役員ではない使用人となっている社長の奥さんのボーナス」についてです。

使用人だから

夏と冬のボーナス時期に普通の従業員

と同じ時期に、同じ働きに見合った金額として

支払っているのに・・。

その賞与が損金不算入ということもあります。

 

役員ではない使用人となっている社長の奥さんがみなし役員となって

使用人賞与なのに損金不算入になってしまうケースは、

『1』どういう理屈なのか?

『2』どのような具体例があるのか?

そして、

『3』その対策について解説したいと思います。

 

役員とは?

法人税法第2条1項15号(役員)の用語の意義には、次のように書かれています。

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法人税法第2条1項15号(役員)

十五 役員 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に

      従事している者のうち政令で定めるものをいう。

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法人の経営に従事している肩書がない者のうち

役員に該当するものの規定については、

法人税法施行令(政令)に

委任していますのでみてみましょう。

 

役員の範囲は?

法人税法第2条1項15号(役員)のみなし役員についての具体的な判定については、

法人税法施行令第7条(役員の範囲)に規定されています。

それでは、みてみましょう。

 

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法人税法施行令第7条(役員の範囲)
第七条 法第二条第十五号(役員の意義)に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。

一 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。次号において同じ。)以外の者でその法人の経営に
  従事しているもの
二 同族会社の使用人のうち、第七十一条第一項第五号イからハまで(使用人兼務役員とされない役員)の規定中「役員」と
  あるのを「使用人」と読み替えた場合に同号イからハまでに掲げる要件のすべてを満たしている者で、その会社の経営に
  従事しているもの

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上記の規定は、いわゆる法人税法における「みなし役員」に関する規定です。

法人税法施行令第7条1項2号の中で、法人税法施行令第71条1項5号イからハまでの規定の中、

「役員」を「使用人」と読み替えて条文を読むのですが

その前に、法人税法施行令第71条(使用人兼務役員とされない役員)の規定は、

どうなっているでしょうか?

ご覧ください。

 

 

「役員」を「使用人」として読み替えると?

以下が、法人税法施行令第71条(使用人兼務役員とされない役員)の規定です。

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法人税法施行令第71条(使用人兼務役員とされない役員)

第七十一条 法第三十四条第六項(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める役員は、次に掲げる役員とする。

一 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
二 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
三 合名会社、合資会社及び合同会社の業務を執行する社員
四 取締役(指名委員会等設置会社の取締役及び監査等委員である取締役に限る。)、会計参与及び監査役並びに監事
五 前各号に掲げるもののほか、同族会社の役員のうち次に掲げる要件の全てを満たしている者
イ 当該会社の株主グループにつきその所有割合が最も大きいものから順次その順位を付し、その第一順位の株主グループ(同順位の株主グループが二以上ある場合には、その全ての株主グループ。イにおいて同じ。)の所有割合を算定し、又はこれに順次第二順位及び第三順位の株主グループの所有割合を加算した場合において、当該役員が次に掲げる株主グループのいずれかに属していること。
(1) 第一順位の株主グループの所有割合が百分の五十を超える場合における当該株主グループ
(2) 第一順位及び第二順位の株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合がはじめて百分の五十を超えるときにおけるこれらの株主グループ
(3) 第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合がはじめて百分の五十を超えるときにおけるこれらの株主グループ
ロ 当該役員の属する株主グループの当該会社に係る所有割合が百分の十を超えていること。
ハ 当該役員(その配偶者及びこれらの者の所有割合が百分の五十を超える場合における他の会社を含む。)の当該会社に係る所有割合が百分の五を超えていること。
2 前項第五号に規定する株主グループとは、その会社の一の株主等(その会社が自己の株式又は出資を有する場合のその会社を除く。)並びに当該株主等と法第二条第十号(定義)に規定する特殊の関係のある個人及び法人をいう。
3 第一項第五号に規定する所有割合とは、その会社がその株主等の有する株式又は出資の数又は金額による判定により同族会社に該当する場合にはその株主グループ(前項に規定する株主グループをいう。以下この項において同じ。)の有する株式の数又は出資の金額の合計額がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額のうちに占める割合をいい、その会社が第四条第三項第二号イからニまで(同族関係者の範囲)に掲げる議決権による判定により同族会社に該当することとなる場合にはその株主グループの有する当該議決権の数がその会社の当該議決権の総数(当該議決権を行使することができない株主等が有する当該議決権の数を除く。)のうちに占める割合をいい、その会社が社員又は業務を執行する社員の数による判定により同族会社に該当する場合にはその株主グループに属する社員又は業務を執行する社員の数がその会社の社員又は業務を執行する社員の総数のうちに占める割合をいう。
4 第四条第六項の規定は、前項の規定を適用する場合について準用する。

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そこで、

同族会社の使用人が「みなし役員」となる規定は、

法人税法施行令第7条1項2号にあるのですが、

具体的な判定は、法人税法施行令第71条1項5号(薄く緑色にしています。)にありまして、

その中で「役員」とあるのを「使用人」と読み替えてみました。

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法人税法施行令第71条1項5号の中で「役員」を「使用人」と読み替え

五 前各号に掲げるもののほか、同族会社の「使用人」のうち次に掲げる要件の全てを満たしている者
イ 当該会社の株主グループにつきその所有割合が最も大きいものから順次その順位を付し、その第一順位の株主グループ(同順位の株主グループが二以上ある場合には、その全ての株主グループ。イにおいて同じ。)の所有割合を算定し、又はこれに順次第二順位及び第三順位の株主グループの所有割合を加算した場合において、当該「使用人」が次に掲げる株主グループのいずれかに属していること。
(1) 第一順位の株主グループの所有割合が百分の五十を超える場合における当該株主グループ
(2) 第一順位及び第二順位の株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合がはじめて百分の五十を超えるときにおけるこれらの株主グループ
(3) 第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合がはじめて百分の五十を超えるときにおけるこれらの株主グループ
ロ 当該役員の属する株主グループの当該会社に係る所有割合が百分の十を超えていること。
ハ 当該「使用人」(その配偶者及びこれらの者の所有割合が百分の五十を超える場合における他の会社を含む。)の当該会社に係る所有割合が百分の五を超えていること。

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同族会社の判定とみなし役員の判定で特徴的なところがあります。

第二順位、第三順位で合計した場合に所有割合が

はじめて50%超となった場合の部分です。

これについては、

<ケース2>で触れていますので

ぜひ最後までお読みください。

 

 

どのような例があるのか?

使用人であるのに「みなし役員」になってしまうケースがあります。

使用人である佐藤社長の妻が判定により「みなし役員」となってしまう

ケースをみてみましょう。

 

【ケース1】  

     佐藤社長(代表取締役)90%保有

     佐藤社長の妻(使用人)0%保有(佐藤社長を通じて会社の経営、運営などの関与をしている設定)

     佐藤社長の父 10%保有

 

      1.同族会社の判定 (みなし役員に該当するのは、まず同族会社が要件となっていますので・・。)

        90%+10%=100%>50%ゆえに同族会社に該当します。

 

      2.みなし役員の判定 (50%超基準、10%超基準、5%超基準を満たす必要があります。)

        佐藤社長の妻がみなし役員に該当するのか判定してみます。

         ① 佐藤家の株主グループの所有割合は100%(90%+10%)であり、第1順位のみで所有割合が

           50%を超えることとなりますので、50%超の要件を満たします。

 

         ② 佐藤家の株主グループの所有割合は100%であり、所有割合が10%を超えていますので、

           10%超の要件を満たします。

 

         ③ 佐藤社長の妻は、所有割合が0%であり、5%を超えませんが、

           佐藤社長の妻及び佐藤社長の所有割合を合計すると90%(0%+90%)5%を超えます。

           佐藤社長と佐藤社長の妻は、会社の経営、運営などについて佐藤社長を通じて関与しており、

           その法人の経営に従事していますので、佐藤社長の妻は、税法上の「みなし役員」に該当します。

           

      <ケース1のポイント>

       A)「みなし役員」のポイントは法人の経営に従事していることです。

         ケース1の例とは反対に、佐藤社長夫婦間で「経営の話は一切しない状況」であるならば経営に

         従事していないことになり、佐藤社長の妻は、「みなし役員」ではなく、「使用人」となります。

 

       B)所有割合の5%超を判定のポイントは、配偶者と支配している法人の所有割合を加算して

        判定します。ケース1の例では、佐藤社長の妻の所有割合は0%ですが、

        佐藤社長の所有割合が90%であるため、佐藤社長の妻の5%超基準の判定をするときは、

        90%(佐藤社長の所有割合)+0%(佐藤社長の妻の所有割合)=90%を用いて

        判定することになります。

 

【ケース2】  

     佐藤社長(代表取締役)40%保有

     佐藤社長の妻(使用人)0%保有(佐藤社長を通じて会社の経営、運営などの関与をしている設定)

     佐藤社長の父 10%保有

     鈴木専務 30%(佐藤家及び田中家との血縁関係なし)

     田中常務 20%(佐藤家及び鈴木家との血縁関係なし)   

 

      1.同族会社の判定 (みなし役員に該当するのは、まず同族会社が要件となっていますので・・。)

        佐藤社長グループ40%+10%=50%

        鈴木専務グループ30%

        田中常務グループ20%

        50%+30%+20%=100%>50%ゆえに同族会社に該当します。

 

      2.みなし役員の判定 (50%超基準、10%超基準、5%超基準を満たす必要があります。)

        佐藤社長の妻がみなし役員に該当するのか判定してみます。

         ① 佐藤家の株主グループの所有割合は50%であり、第1順位のみで所有割合が

           50%を超えません。そこで、第二順位の鈴木専務グループの所有割合30%を加算すると、

           所有割合が80%(50%+30%)ということになりこととなりますので、

           第一順位及び第二順位の合計ではじめて50%超のとなるため50%超基準を満たします。

 

         ② 佐藤家の株主グループの所有割合は50%であり、所有割合が10%を超えていますので、

           10%超の要件を満たします。

 

         ③ 佐藤社長の妻は、所有割合が0%のため5%超ではありませんが、佐藤社長の妻及び佐藤社長の所有割合を

           合計すると40%(0%+40%)となり、5%を超えます。

           佐藤社長と佐藤社長の妻は、会社の経営や運営などについて佐藤社長を通じて

           関与をしているため、その法人の経営に従事していますので、佐藤社長の妻は、

           税法上の「みなし役員」に該当します。

           

      <ケース2のポイント>

       A)「同族会社の判定」をする場合、第一順位、第二順位及び第三順位の株主グループの

        所有割合を合計して50%超であるときは、同族会社となります。

        株主グループが第三順位まである場合には、3つの株主グループを

        合計して同族会社の判定することになるのです。

 

       B)「みなし役員」「使用人兼務役員とされない役員」を判定する場合には、

        同族会社の判定のやり方とは少しだけ異なります。

        今回の<ケース2>の「みなし役員」の判定を行う場合、

        第一順位の佐藤グループの所有割合のみでは、所有割合が50%超とならないため、

        第二順位の鈴木専務グループの所有割合30%を加算しなければいけません。

        50%(第一順位の佐藤グループ)+30%(第二順位の鈴木専務グループ)=80%>50%となりまして、

        50%超基準を満たすことになります。

        ここで第二順位の鈴木専務グループなのですが、所有割合が50%超基準、10%超基準、5%超基準を

        満たすこととなりますので佐藤グループの時と同様に、鈴木専務の妻が同じ会社に使用人として

        勤務していた場合には、経営に従事してるのかの判定をしなければなりません。

        経営に従事しているようであれば、鈴木専務の妻も「みなし役員」に該当することになります。

        ちなみに、第一順位、第二順位の株主グループの所有割合で50%超となるので、

        田中常務グループは、「みなし役員」「使用人兼務役員とされない役員」の判定の対象外となります。

        

 

 

どうしたらいいのかの対策について

2つあります。

1)仕事場や家庭内などで会社の運営の話を一切しないことに決めておく!

2)ボーナスを支給しない!

3)事前確定届出給与に関する届出を行う!

 

では、順を追って解説していきます。

 

1)仕事や家庭内で会社の運営の話を一切しないことに決めておく!

 

税務調査の時に調査官が次のように質問してきます。

=========================

「家に帰って食事をしてる時に会社の経営についての

話をしませんか?」

=========================

などと、まさに誘導尋問です。

うっかり「まあ~。ありますね~。」

なんて答えてしまったら

後の祭りです。

認めてしまったら、

定期同額給与等以外の給与に該当するので、

そのボーナスの金額は、損金不算入となります。

そこで、

会社経営の話は夫婦間で

しないことにしておくことがいいと

思います。(可能であるならば・・。)

 

 

2)ボーナスを支給しない!

使用人である社長の奥さんのボーナスを支給しないという方法があります。

社長の奥さんの定期同額給与に賞与分を上乗せして支給すれば、

よいのではないかと思います。

 

 

3)事前確定届出給与に関する届出を行う!  ※1

支給額に変更がないのであれば、

前もって「事前確定届出給与に関する届出」を

前期の株主総会後等の一定の期間内等までに

所轄の税務署に提出しておくのも

いい方法だと思います。

 

 

最後に

最後までお読みいただきまして

ありがとうございました。

 

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※1 2022年6月29日14時40分 追加修正しました。



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